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高森明勅
2019.9.23 06:00皇室

大嘗祭の「国家」的性格

大嘗祭は皇位継承に伴う重大な儀式。
だから当然、国家的な性格を持つ。
改めてその点にも言及しておく。

制度的に確立した第1回の大嘗祭である持統天皇の大嘗祭に、
既に「公卿(まえつきみ)より以下主典(ふびと)に至るまで」、
つまり朝廷の上層部から末端までが、行事に携わっていた事実を
確認できる(日本書紀)。

又、平城京跡の発掘調査によって、「朝堂院」跡から大嘗宮の遺構が
発見されている。
朝堂院は、大内裏(だいだいり、宮城〔きゅうじょう〕)にあって、
政務・儀式などが行われた中心的施設だ。
先のブログで「“内裏”の朝堂院」と書いたのはうっかりミス。
なので、この際、訂正しておく(他にも同種の誤記はあるかも)。

儀式にとって、それが行われる「場所」も極めて重要な意味を持つ。
内裏(天皇の御所)で行われるなら、一先ず“内廷(ないてい、宮廷の内部)的”
な性格の行事と見る事ができる。
一方、大内裏の朝堂院なら紛れもなく「国家的」行事だ。
これに関連して思い出すのは、昭和から平成に移って間もない頃、
テレビ朝日の「朝まで生テレビ」に出演した時のやり取りだ。

I氏が「大嘗祭なんて神秘的な秘儀なんだから、天皇の私的な行事として、
人知れず内々でやればよい」という趣旨の発言をされた。
これに対し、私は「前近代の大嘗祭のスタンダードな形では“どこ”で
行われるべき事になっていたか、それを知った上でそんな発言をされて
いるのですか?」と問い詰めた。
彼は顔面蒼白になって答えに窮した。
「そんな事も知らないで無責任な発言をしないで下さい。朝堂院ですよ。
朝廷の最も中心的な施設で、極めて国家的な空間でした。
大嘗祭は元々、国家的な行事なんです」という意味の言葉で、
そのやり取りを締め括った記憶がある。

上記の「スタンダードな形」というのは、貞観『儀式』『延喜式』
の規定を念頭に置いていた。
大嘗祭の「国家的」性格について看過すべきではない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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